2021.02.08 不動産関係

倉庫・工場を賃貸する時に連帯保証人は必要?

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倉庫・工場の賃貸で連帯保証人はほぼ必須

事業において倉庫や工場が必要となる場合、一から施設を建設するのではなく、既存の施設を借りて使用するケースが多く見られます。そのような倉庫や工場の賃貸契約においてしばしば問題となるのが「連帯保証人」に関することです。

基本的に倉庫や工場だけでなく、事務所やマンション、貸家などの不動産の貸し借りをする際には連帯保証人が必要となります。とりわけ倉庫や工場の場合、賃料は数十万~数百万円と高額になることも珍しくないため、連帯保証人を付けることをオーナー側が契約の条件として提示することがほとんどです。倉庫や工場を借りる場合、基本的には連帯保証人を立てる必要があると考えておきましょう。

連帯保証人には家賃の支払い能力が求められる

倉庫や工場を借りるときの連帯保証人について考える際には、まずは連帯保証人にはどのような役割があるのかを知っておく必要があります。

不動産での賃貸借契約における連帯保証人の役割とは、簡単にいうと「家賃を保証すること」です。借主が何かしらの理由で家賃を支払うことができなくなってしまった場合に、連帯保証人にはその家賃を支払う義務が発生します。連帯保証人が支払うことにより、オーナーは確実に家賃収入を確保することができるのです。このことから「連帯保証人は家賃の支払い能力を持つ人だけが担うことができる」ということが大前提であるということを覚えておくとよいでしょう。

連帯保証人は居住用としてマンションやアパートの一室を借りる際にも必要となるケースが多く、このような場合には家族や親族が連帯保証人となるのが一般的です。しかし、法人が倉庫や工場などを借りる際の連帯保証人は基本的にその会社の代表取締役が務めることとなっています。この点で、居住用物件を借りる際の保証人とは大きな違いがあるのです。

また、管理会社やオーナーの意思しだいでは、代表取締役以外の連帯保証人が必要となるケースもあります。それに加え、法人としての与信が十分でない場合などにも代表取締役以外の連帯保証人が必要となるケースがあるため、詳細は契約締結前にオーナーや管理会社に確認をしておくとよいでしょう。

連帯保証人がいない場合

基本的に連帯保証人は家賃の支払い能力を持つ人だけが担えることとなっています。そうはいっても、家賃が高額になりがちな倉庫や工場の場合、その金額に見合った十分な支払い能力を有する個人を見つけることは容易ではありません。場合によっては代表取締役以外の連帯保証人を立てることができないということもあるでしょう。

もっとも、連帯保証人は法律で立てることが定められているわけではありません。そのため、交渉次第では連帯保証人なし、あるいは代表取締役だけを連帯保証人として契約を締結することも可能です。どうしても指定された条件を満たした連帯保証人を見つけられない場合には、正直にそのことをオーナ ーや管理会社へ伝えて、契約締結の条件を緩和してもらえないか交渉するという方法があります。

ただし、このような交渉をする上では、連帯保証人を規定通りに立てない代わりに保証金を多めに設定するなど、信用度を上げることが大切です。また、オーナーや管理会社によっては、家賃をしっかりと納めさえすれば細かな契約条件は気にしないという場合もあります。そのような場合には家賃の滞納保証をしてくれる保証会社を探し、連帯保証人になってもらうという方法も有効です。

このように、連帯保証人がどうしても見つからないという際には、可能な範囲内で契約の締結条件を変更してもらうよう交渉をするのが良いでしょう。

【2020年4月に施工】連帯保証人の民法改正の内容について

不動産の貸し借りに限らず、契約を締結する際に指名できる連帯保証人は決められています。民法に細かな規定があり、それに則った連帯保証人制度が運用されてきました。しかし、この連帯保証人制度に関する民法の内容にはいくつかの問題点が指摘されていたのです。そのため、2020年4月から改正民法が施行され、新たな規定の適用が開始されました。

この民法改正における主な変更点のひとつが「個人根保証契約」という継続的に取引が行われる契約形態における「極度額」に関するものです。そもそも、連帯保証人制度における極度額とは「連帯保証人に支払い義務が生じる責任限度額」を意味します。例えば、連帯保証人の極度額が10万円だったとしましょう。連帯保証人にかかる支払いが10万円を超えてしまった場合、連帯保証人は原則超過分を支払わなくてよいのです。

しかし、従来の民法ではこの極度額を記載することが必須となっておらず、極度額を明示せずに連帯保証人となってしまった人にかかる責任が支払い能力を超過してしまうことがありました。そこで改正民法では極度額の記載が必須となり、連帯保証人へかかる責任の重さを事前にコントロールできるようにしたのです。

また、改正民法では、借主が連帯保証人を立てる場合に連帯保証人への情報提供を義務づけることが明記されました。借主が連帯保証人を立てる際に、自身の財産状況や収支状況などの情報を連帯保証人に知らせることが必須となったのです。これにより、情報提供を受けた人は借主の経済状況を把握した上で、連帯保証人になるか否かを判断できるというメリットが得られるようになりました。

連帯保証人と保証会社はどちらがいい?

連帯保証人とは、物件を借りている人が家賃を納められなくなった際に、代わりにその納付をする責任を負う人のことです。しかし、倉庫や工場を借りる場合には、連帯保証人と保証会社(賃貸保証会社)の両方の利用を管理会社やオーナーから依頼されるケースもあります。

保証会社の役割は基本的に連帯保証人と同じですが、こちらは法人である分、個人の連帯保証人よりも支払い能力が高いというメリットがあります。倉庫や工場の場合は家賃が高額であるため、借主が家賃を滞納した場合に生じるオーナーの損失は非常に大きく、その発生を未然に防ぐという意味でより確実な保証会社を利用するオーナーや管理会社は少なくありません。

この保証会社を利用する場合、借主は保証会社へ加入料を支払うことが必要になります。この加入料は家賃の0.5~1ヶ月程度に設定されていることが多く、入居前に掛かる費用が高額になりやすいというデメリットが挙げられます。倉庫や工場を借りる場合、この加入料の負担がネックとなって契約を断念するケースも多いようです。

保証会社の保証期間は短め

貸主やオーナーは保証会社を利用する場合、保証期間の長さについても理解しておく必要があります。保証会社による家賃の保証期間は、一般的な居住用物件の場合1~2年となります。一方、倉庫や工場の場合の保証期間は3~6か月程度と非常に短いのが特徴です。

これには、倉庫や工場の家賃が居住用物件の家賃に比べて割高であることが大きく関係しています。家賃が割高な物件は、数か月家賃の支払いが滞っただけでも非常に大きな損害を被ってしまいます。そのため、保証会社は、保証期間を短めに設定し、支払いが止まった際の損失を最小限に抑えているのです。保証会社を利用する際は、保証期間の長さを忘れずに確認しておきましょう。

さいごに

倉庫や工場を借りる場合には、基本的に連帯保証人が必要です。その際、代表取締役は連帯保証人になるものと考えておきましょう。場合によっては代表取締役以外の連帯保証人が必要となるケースもあります。

また、管理会社やオーナーによっては、連帯保証人と保証会社の両方の利用を契約条件として提示することもあるので事前に確認しましょう。

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